奈 良 経 済 同 友 会
代表幹事 岡 村 元 嗣
代表幹事 柳 谷 勝 美

わが国の景気は、原油高騰に伴う諸物価の上昇や中小企業を中心とした賃金抑制に加えて建築確認手続き厳格化に伴う住宅着工の大幅な落ち込みなどがあり、個人消費をはじめとする内需の伸び悩みがみられる。一方、外需はサブプライムローン問題の拡大に伴う米国経済の先行き不透明感はあるものの、輸出の増加が続いており、生産は堅調で企業収益も改善しており、緩やかながら景気拡大が続いている。
大企業と中小企業の格差が広がるなか、中小企業を主体とする奈良県においては、生産が低位で推移し、売上高、収益とも低迷し、景気回復の実感に乏しい状況が続いている。雇用情勢が力強さを欠き、個人消費においても一進一退が続くなど、依然、先行きの不透明感がぬぐえない状況となっている。
また、県財政を見ても、歳入面で税源移譲による一時的な税収増要因があるものの、団塊の世代の退職、少子化や転出超に伴う人口減少に加えて、事業所数の減少等に伴い、将来的には税収の減少が懸念されており、緊縮財政が続くなど、厳しい状況が続いている。
このように、依然、明るさが見えない奈良県であるが、昨年4月に荒井新知事が就任され、平城宮跡の国営公園化をはじめ「平城遷都1300年記念事業」の見直しや積極的な企業誘致、観光客誘致策などを矢継ぎ早に打ち出し、奈良県の変革に向けた動きが活発化している。

我々、奈良経済同友会は、以上の奈良県の置かれた現状を踏まえ、県内民間企業の政策提言集団として、次の3点をテーマに、行政やNPOとのコラボレーションを図りつつ、引き続き本年も地元奈良の活性化をめざして、啓蒙・啓発および支援活動を展開していく所存である。

1.「奈良に住みたいまちづくり」の推進
現在、奈良県では県の経済産業活性化に向けて、「県内への企業誘致」「観光の活性化」などが積極的に推進されており、持続性のある奈良県の基盤づくりに大きく期待がかかるところである。この動きとも関連するところであるが、我々は「奈良に住みたいまちづくり」の推進をまず第一に提言する。県内へ企業を誘致するにしても、県内の観光活性化を図るにしても、奈良が「住みよいまち」「住みたくなるまち」であることがその前提となる。例えば「電柱のないまち」「バリアフリーのまち」「歩く道が整備されたまち」などは奈良に観光客を誘致するだけでなく、企業の誘致についても奈良の魅力発信の源(みなもと)になる。「まちづくりはまちなみ景観の整備から」ともいわれ、美しいまちなみは最大の観光資源であると同時に、企業従業員の快適な住環境を形づくるものでもある。そのためには、経済活性化と景観保全のバランスを考えた規制の緩和と強化の見直しが必要となるだろう。また、「住みよいまち」という観点から、新興住宅地の空洞化対策や医療体制の24時間システム化も早急に対応していかなければならない。

2.「ミュージアム奈良県-奈良花の歴史回廊構想」
奈良県が将来的にも持続的な発展を遂げていくためには、奈良県の特性を見極め、それに磨きをかけ活かしていくことが肝要である。
言うまでもなく、歴史文化と豊かな自然は、奈良を特徴づける大きな特性である。県内には多数の観光地や観光資源があるが、残念ながらこれらの連携は必ずしも取られていない。点から線、さらには面の観光へ向けて、県民挙げての取り組みが求められているところでもある。
そこで、点在する観光地を結ぶものとして「ミュージアム奈良県-奈良花の歴史回廊構想」を掲げたい。奈良には桜の吉野山、梅林の月ヶ瀬や賀名生、牡丹の長谷寺など数多くの花の名所があり、多くの観光客が訪れるスポットになっている。それに加えて、県内の企業や住民が自分たちの敷地や庭に四季折々の花を植えてまちの景観を良くすることを提唱したい。県内各地で自分たちのまちを花で飾ることができれば、花の魅力に溢れた奈良県のイメージづくりができるのではないか。学校や病院でも花を植え育てることが盛んになれば、まちの美化だけでなく子供の情操教育や病人の癒しにもなり、「住みよいまち」づくりにも役立つ。
「ミュージアム奈良県-奈良花の歴史回廊構想」は、こうした取り組みを全県的に広げることで奈良県全体を歴史文化と花や自然が一体となったミュージアムとし、「文化と癒しのまほろば奈良」を創造していこうという構想である。
「奈良花の歴史回廊」を構築していくためには、たとえば「花いっぱいの歴史回廊道路」の指定や整備、地域の壁を越えたプロジェクトチームの結成などが必要となろう。奈良のうまいものやみやげものなど奈良ブランド商品の情報発信・販売の拠点として「道の駅」の役割も大きく、その充実や新設も求められてこよう。また、「奈良花の歴史回廊構想」は、経済波及効果の大きい宿泊滞在型観光への転換の手がかりにもなりうる。

3.「人材供給県奈良」への意識転換
奈良の伸ばすべき特性としてもうひとつ挙げるとすれば、その教育水準の高さだろう。教育熱心な県民風土のもと、奈良県の大学・短大等進学率は全国でも指折りであり、奈良県は産業界をはじめ各界に優秀な人材を供給している。これらを可能にしている背景には、充実した「地域の教育力」があることは言うまでもない。この「地域の教育力」に磨きをかけ、「人材供給県奈良」への意識転換を図ることが今後の奈良県の持続的発展につながるものであると考える。
そのためには、「基礎学力」「コミュニケーション能力」「人を思いやる心と力」の向上が不可欠であり、小学校30人学級の一日も早い実現が望まれるところである。団塊の世代の退任が進むなか、教員の若返りと意識転換がそのテコになると考えられる。一方、全国ネットで活躍する奈良県出身者を招いて県内の小・中・高校で講演や授業を行うことや、移転も含めて奈良県立大学の内容を充実し、定員増や教授陣の充実などにより、次代の有為な奈良県人を養成することも考える必要があるだろう。

以 上