「日本復活の指針」
-取り戻せ、日本人の美学-

歓迎の挨拶をする奈良・柳谷勝美・代表幹事

第66回西日本経済同友会大会が当奈良経済同友会の担当で10月17日(金)~18日(土)なら100年会館、ホテル日航奈良で、西日本18地区経済同友会より420名が参加。「日本復活の指針-取り戻せ、日本人の美学-」をテーマに基調講演とパネルディスカッションを行い、大会共同見解を採択した。続いて会場をホテル日航奈良に移して懇親パーティーを開催し、翌日の18日はエクスカーションを行った。

金峯山寺配下山伏の法螺の作用

大会は金峯山寺配下の山伏7名による「金峯山寺流法螺の音用」「法螺の作用」のオープニングセレモニーではじまり、まず開催地・奈良・柳谷勝美・代表幹事が、「世界経済はアメリカの金融危機に端を発して世界中が混乱状態にある。私たちは赴くままの欲望と人間の欲望の追求のあまりに、市場か混乱し、あるいは地球環境を破壊し、いろいろな負の責めを負っている。私たちは自らの社会と調和を尊重する倫理観や自然との共生を大切にする伝統を再認識して、世界に発信することが、今、大切である。」と歓迎の挨拶。

問題提起する・関西齊藤紀彦・代表幹事

続いて議長団を代表して、関西・齊藤紀彦・代表幹事が「グローバル化が進む中で、活力ある日本を築くために何が必要なのか、日本そして日本人の原点から考えてみたい。世界同時不況、テロ問題、食料問題等深刻な課題が山積しているが、これらの問題に対応を定めることができない。今こそ日本らしさを確立する必要がある。「日本らしさ」を考えるヒントが奈良にある。日本という国にもっと自信を持つ必要がある。単に昔の日本人に戻ればよいというものではなく、わが国の将来を見据えた、新たな「日本らしさ」を生み出していくことが求められている」と問題提起した。

基調講演する・中西輝政・京都大学大学院教授

基調講演で中西輝政・京都大学大学院人間・環境学科・教授は「日本の時代が来た」、現下の金融危機に際しても日本だけがそれほど大きなダメージをうけていない。これは、国の成り立ち、伝統的な文化、価値観、など社会の基本的な体質・特質が欧米とは違う。21世紀は文明の世紀、文明の共存をいかに達成するかで、日本は一つの文明、文明圏であり、自然との一体の中で作り出される。自然への畏敬の念が絶対的条件で自然が課している日本の文化、文明が根底の根底である。

現在日本でいろいろ発生している社会的責任を問われる不祥事は「日本の文明」が大きくバランスを失おうとしている結果である。その一つは「物と心のバランス」、二つ目は「進歩と伝統のバランス」、三つ目は「文明としての日本の崩れ」である。日本は一つの国で一つの文明体をなし、特異でユニークでそれ自体の論理をもった文明体である。日本という国は心を失ったらおしまいで、心は常に手入れをしていいないと根底から崩れてしますものである。」と語った。

パネルディスカッション

パネルディスカッションでは、中野健二郞・関西経済同友会・代表幹事をコーディネーに、パネリストには、角和夫・阪急阪神ホールディングス・社長、跡田澄直・大阪大学大学院医学系研究科・特任教授、山田法胤・法相宗大本山薬師寺・副住職、森雅彦・森精機製作所・社長がそれぞれ立場から「日本ならではの強み」「日本の強みと異文化の調和」「国際社会からの信頼」「経営者の役割」について議論を展開した。
跡田教授は「日本は復活し、技術力も人間力も大丈夫だか、不安は政治と行政の貧困である。皆なが豊かになるようにような形で競争する制度に作り直す必要がある。発展途上国と先進国との間での貿易の場合にはなんらかの形で発展途上国を優遇する制度が必要だ。経済学では利潤最大化を企業の根本理念としているが、企業がめざすべきものは、公共の福祉の増進で利益を社会に還元して
いくという理念をきちんともつべきである。」
山田副住職は「仏教に「一得一失」という言葉があり、一つ得をすると、必ず一つ失っているものがあると言う意味で、日本もそんなに変わらないと思う。稲・米は連作がきき、一粒万倍で増えていく食料で、日本は2000年続けてきた。歴史のある法隆寺・薬師寺・東大寺も1400年脈々と信仰されている。余り右往左往しないで対処していくことを奈良で学んで欲しい。日本人が世界に羽ばたいていくには精神力と勤勉と教養が必要である。日本は他民族と混在して「天神地祀」で八百万の神という形で混在一体してきた。感謝し合って祭りを起こし、自然に感謝することを大事にしてきた。聖徳太子以来の「和の文化」を怠ってはいけない。幸田露伴の「植福のすすめ」という言葉がありますが、経営者の役割は日本の未来に何か植福して、子供たちに喜んでもらうことである。
角社長は「ようやく日本のものづくりの時代がきた。問題の一つは人口問題、二つ目は教育問題そして三つ目は税制である。鉄道会社が補助金なしでやっているのは日本だけ。沿線のブランドや価値を創ることによって成長発展してきた。時代の変化とともに規制というものも変わらなければならない。好きな言葉は「誠実」「謙虚」「バランス感覚」そして「流水先を争わず」である。
森社長は「安い人件費を使って、何かちょこっと儲けようとするのはだめである。日本のパスポートほど強いパスポートはない。世界で「さんづけ運動」をしている。長期雇用で人を社内に入れて育てていくことである。日本人はいまマナーが悪くなっている。もっと宗教心を持ち忘れてはならない。日本は技術力を高め、より早く、寄り精密に、より安くできる商品を作っていけば自然と国際貢献ができる。お金を出すことは、一種の社会貢献で立派なことである。日本が赤字で大変だったら3年ただ働きするとか、社会奉仕するとかで、3年も我慢すれば何事も変わる。」と語った。

閉会挨拶をする福本良平・奈良・代表幹事

その後、柳谷勝美・奈良・代表幹事から共同宣言の発表、そして、山口経済同友会・福田浩一・代表幹事から次期開催地の挨拶。大会プログラムの最後に、奈良・福本良平・代表幹事から「問題提起、基調講演、各パネリストへの御礼の後、「21世紀の最初の10年間を前半の5年間は20世紀のスキーム破壊、後半の5年間は21世紀のスキームをつくる時代で、2010年までに、21世紀の日本のビジョンを確立されることを願う。また現在政策目標として、GNH(国民総幸福量)、国民の精神的な満足度向上を追求すべきである。」と閉会挨拶し、大会を終了した。

会場をホテル日航奈良に移して懇親パーティーを開催。パーティーは「奈良フィルカルテット」のウェルカム演奏ではじまり、平城遷都1300祭の公式キャラクターの「せんとくん」ダンス、続いて、荒井正吾・県知事、藤原昭・奈良市長の歓迎の挨拶、西口廣宗・奈良県商工会議所連合会の乾杯と進め、古代衣裳のコンパニオンや会場内には物産展・地酒コーナーを用意。宴盛り上がりの中で、中谷堂の「高速餅つき・匠の技」やバサラ「平城人(ならびと)によるセレモニーダンス」のアトラクション、山本太治・実行委員長の閉会挨拶で閉会。エクスーションでは当日の「西大寺大茶盛体験」「薬師寺・写経体験・平山壁画見学」のレディースコース、懇親パーティー終了後のヒルトップテラスでの「奈良ナイト」、翌日の18日は「秋篠寺」「平城宮跡・大極殿修復現場・朱雀門」「東大寺」のAコース、と「平城宮跡・大極殿修復現場・朱雀門」「高松塚古墳壁画館」「飛鳥資料館」「甘樫丘展望台」のBコースで奈良の秋を満喫した。

<懇親パーティー・スナップ>